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世紀のスポーツの在り方について
001356A 高 久 雄 典
<はじめに>
戦後、労働基本法の改正等による年間労働時間の短縮、「ゆとりの学習」を目指した学校完全週5日制の実施等による学校からの解放などによって、国民の自由時間が増大し、仕事中心の生活からライフスタイルを重視する人々の意識の変化などにより、自由時間を上手く活用し、精神的にも豊かな生活を求めるようになってきた。しかし、高度経済成長や情報関連等の急激な発展によるストレスの増大、情報化を反映して、パソコンのカーソルを合わせるだけで何でもそろうような便利な時代とはなったものの、逆に身体を動かす機会が減少した。特に、テレビゲームの登場・発展は、子どもたちをとりこにし、外に出て走り回る子どもたちの姿を見ることが少なくなってきた。そのおかげとは言い切れないが、子どもの体力・運動能力が低下しているという深刻に考えなくてはならない問題がある。また、日本は世界No.1の長寿大国である反面、出生率の低下によって、少子・高齢化という問題にも直面している。
このような社会において、国民がスポーツに求める目的・実施内容も高度化・多様化してきた今、国や地方公共団体は数多くの計画を立てている。その中心となっているのが1961年<S36>の「スポーツ振興法」である。これは、国民のニーズや期待にこたえて、1人1人がスポーツを生涯を通して永続的に実践して行け、また、競技力の向上にもつながるようなスポーツ施設等の整備を目指したものである。特に力を注いでいるのは、各都道府県ごとの広域スポーツセンター、各市町村ごとの総合型地域スポーツクラブの育成を急いでいる。今回私は「総合型地域スポーツクラブ」についてまとめていく。
<総合型地域スポーツクラブについて>
- 概
要
- 国民の多種多様なニーズや年齢・競技レベルに応じて複数の種目を用意し、それぞれに質の高い指導者を準備・
育成する。
活動の拠点となるスポーツ施設・クラブハウスを整備する。
地域住民が主体的に運営(行政の補助)
- 現時点での問題点
T環境の整備
- 近年になって多くの人々がスポーツの必要性を認識するようになり、自ら進んで積極的に運動しようとする傾向が強くなってきた。中高年の人々が早朝や夕方などの時間を利用して、ウォーキングする姿をよく見かける。しかし、現在行なわれているスポーツは種類が限られており、その他の施設等を必要とするスポーツの受け皿となり得るスポーツ施設の絶対数がまだまだ不足している。また、立派な施設は整っているのだが、費用が高かったり、場所が遠かったりして有効に活用できていないのが現状である。この点について国では文部省がスポーツ振興法を軸とした計画を立てていて、
2010年までに各市町村に総合型地域スポーツクラブ、それを補佐するものとして各都道府県に広域スポーツセンターを育成しようとしている。早急な計画実行を望みたいが、この計画は長期的に見れば有効であろう。しかし、現時点でスポーツに取り組もうと思う人も数多くいるわけで、そのような人達にはどのような対策があるのか、その辺をはっきりとして欲しいと思った。
U地域住民の意識改革
- 国民の間でスポーツの必要性が理解されつつあり、スポーツに対する欲求も高まってきているといっても、まだまだ十分ではなく、大部分の人々に浸透していない。スポーツはやりたいのだが…、と考えているばかりでそれが実行に移されるかというと、環境の不備もありなかなか始めることが難しい。せっかく自由時間が増大し、もっともっと余暇を有効に使うべきなのだが、生活の便利さも災いしてか休日は家でテレビを見ながらゴロゴロするのであろう、外出の機会さへ失われつつある。私の父は地域の体育協会の会長を務めている。父は、積極的にスポーツ大会などの計画を立てている。もともと父はスポーツ好きで、自ら草野球チームを作ったり、町の体育祭やスポーツ大会には何かしら関わったりしている。自分の仕事以外にここまで頑張っている父を見ていると、とても尊敬できる。私の父を例に出すととても恥ずかしいのであるが、実際にスポーツを行っていくのは地域住民であり、このようにその地域住民が先頭に立って積極的にスポーツ振興を推し進めていくことも必要ではないかと思う。
V人材育成
- 前述したように、2010年までに総合型地域スポーツクラブが確立されるとして、そのクラブを運営していくクラブマネージャーの育成も必要となる。国としては実際にスポーツ振興の進んでいる地方公共団体等の先進事例を基にセミナーを開催して情報を提供したり、クラブマネージャーの育成をカリキュラム化して育成講習会を開催したりしている。しかし、たくさんの有望な人材を必要とするために、人材育成にはまだまだ時間を要するだろう。
W学校との連携
- 我が国のスポーツで一番何が問題か、私は子供達のスポーツ離れであると思う。「受験戦争」とまでいわれるほど小さいときから勉強に追われ、せっかく学校週
5日制になっても生活の中にゆとりがない。また、テレビゲームの急激な発展により、子供たちの行動範囲が家の中に絞り込まれてしまった。以前のように外に出て遊んだり、部活動に入部して仲間と共に汗をかくというのは、もはや時代遅れなのであろうか。このような背景がスポーツテストに反映され、年々子供達の体力・筋力が低下している。そこでこの総合型地域スポーツクラブでは、「学校」という枠にとらわれず、地域住民と子供が一緒になってスポーツ活動を行おうというものなのである。ここでは、学校体育施設を共同利用し、地域住民との交流を深めようという意図もある。更に、法令として週に1.2回のスポーツ活動を義務づけるなどすれば、子供達のスポーツ離れを食い止め、希薄な人間関係も改善できるであろう。
<まとめ>
今回、スポーツ振興法を中心に討論されている日本のスポーツ事情を調べていったが、スポーツ振興法という計画があり、スポーツの需要が増えてきたのに対し、国や地方公共団体の対応がまだまだ遅いということが分かった。また、学歴重視の社会・身の回りのものの急速な発展が、子供達のスポーツ離れに大きく影響していることも問題である。これは単に子供達だけの問題ではなく、将来の国際的な競技力の低下にもつながる可能性もある。これからは、国民一人一人がそれぞれに自分に合ったスポーツを見つけ、生涯にわたって続けていけるような環境を整備していかなければならないであろう。21世紀にはますますスポーツが身近にあればいいなぁと思う。
*参考*
http://www.honko.com/00/01/s36/141.htm#s020:スポーツ振興法
http://www.monbu.go.jp/singi/hoken/00000255/:保健体育審議会答申(2000・8)
http://www.monbu.go.jp/news/00000598/:文部省ニュース(2000・10)